身の回りの川の現状認識


<変化していく川の環境>
 川は流域全体にうるおいと豊かさをもたらす地域固有の財産であり、地域に張り巡らされた巨大な水流ネットワークです。それは昔から、生命を育み、私たちの生活を支え、地域の美しい自然環境の一部でした。
 しかし、川を取り巻く環境は、これまでの治山、治水、利水優先の河川整備・利用や人々の生活様式の変化等に伴い大きく変化してきました。
 小川の水路化、川の分断化、川床の低下、取水等による表流水の減少、また山林の荒廃等に伴う保水力の低下、宅地開発等による水質の悪化など、数多くの変化があります。これらにより、魚などの生息環境は大きな影響を受けたばかりでなく、私たちは地域の豊かさの象徴でもあった身近に親しめる小川を失いました。

<小川の水路化・暗渠化>
 私たちが川を捉える場合、大きな流れに目がいきがちです。しかし、身の回りにある水路も、少し前までは『小川』と呼ばれ、大きな川につながる川の一部でした。その大部分が、昔から稲作農業の必要上作られた水路でもあったわけですが、そこには豊かな自然が宿り、地域に豊かさとうるおいをもたらす『小川』となってきたものです。
 その地域に張り巡らされた『小川』こそが、本川、水田、湧水地とのつながりを通じ、数多くの魚類を育む場所であり、本川との行き来により、水系全体の豊かな魚類層を支えるところであったとも言えましょう。
 近年、最も身近な川であった『小川』は、生産・生活手段のひとつとして文字通りの「水路」に変貌してしまいました。そこには、自然や魚類はなく、うるおいや親しみを感じようがありません。それは、私たちにとり身近な川・自然の喪失と言えましょう。
 水路は、さらに維持管理上の観点から、『暗渠化』という動きも始まっています。

<分断され、ほそる河川環境>
 川は、本川において水源から河口まで、多くの大小の堰堤により分断されています。
 昔であれば『小川』と呼ばれた農業用排水路についても、川との合流部分で大きな落差の水落が造られ、本川などと完全に分断されているものが数多くみられます。
 また、農地整備の進展による排水路と水田との落差についても、フナやナマズなどのような増水時に水田等の一時的水域に遡上し、産卵する魚種にとり、生息数の減少の要因ともなっています。 
 このように、魚類の生態系上、水のつながりは非常に重要であり、かつては本支流、水路だけでなく、地域に広がる水田すべてが魚類の生息に密接に関係していました。現在は、それが堰堤や落差工等によりバラバラに分断されている状況にあると言えます。
 魚類の生態系上、川は地域全体であったのが、地図上における青い線だけになり、又その線も堰堤等により分断され、正に、「細ってしまった」と言えます。
 地域の魚類は、海から遡上してくるもの、地域の川で回遊するもの、きれいな水の場所だけで生息するもの、特殊な産卵形態をとるものなどさまざまなものの寄り集りでもあり、分断された河川環境は水量・水質の問題とともに魚の回遊や生息に大きな影響を及ぼしています。

<川は流域、即ち地域そのもの>
 本来、川の水源とは流域全体であるはずです。私たちの足元に水源があり、そこに川の始まりがあるのです。
 水田の用排水、雨水、家庭排水などが流れていくために地域にはいたるところに川へつながる水路が作られています。川の環境を考えていく場合、川を一本の線としてではなく、「流域」の視点で面的に捉えていくことが今求められています。
 また、上で述べたように、魚類の生態系上、地域に広がる水田地帯そのものがその生息環境の一部でもあります。
 このように、川づくりを考えていくことは、地域そのものを考えていくことともなります。

<川づくりは地域づくり・まちづくり> 
 川づくりは、広く捉えると流域全体が対象となります。そのためには、地域住民、事業者、市町村、県、国等、関係者すべての協働・連携が必要とされます。まさに、川づくりは「地域づくり・まちづくり」と言えるでしょう。

<川づくりを考える環境が整いつつあります>
 昔と比べ、大きく環境が変化している川ですが、近年、下水道などの整備進展によりその水質が改善の方向にあることや多自然型を基本する河川整備の開始により、河川環境は改善への動きも始まっています。
 住民の間で、思い出のある川などを対象とした身近な環境問題への関心が高まりつつあります。また行政においても、流域などを単位とした河川環境の改善に向けた取り組みや、住民等との協働によるまちづくりへの取組みが始まっています。
 私たち住民自身が川づくりについて考えていく環境が整いつつあると言えます。


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